スピーディな捜索には土地勘が大切
家出人捜索は、浮気調査に次いで興信所に依頼の多い仕事で、平均で2割くらいを占めます。
小規模な興信所には無理な仕事で、受けてくれないところもあります。
この調査の概要について説明します。
警察か?興信所か?
警察への捜索願を出せば探してくれるのではないか?
普通の人は興信所よりまず警察が頭に浮かぶと思います。
警察への届出はもちろんしてください。
ただし、警察が積極的に捜索してくれるのは、事件性が明確で「特異家出人」として受理してくれた場合だけです。
例えば「拉致された疑いがある」「遺書がある」などの場合です。
事件性が明確でないと、「一般家出人」として受理され、大したことはしてもらえません。
特に家出人が大人の場合は、事件性がないのに警察が積極的に捜索しなければいけない義務はそもそもありません。
大人は誰にも言わないで好きな場所に行く権利があるからです。
あと、捜索願の提出は親・配偶者やそれに準ずる人しかできないことに注意してください。
恋人や友人だと受理されません。
警察が当てにできない時、頼りになるのが興信所です。
家出人のタイプ
興信所に捜索依頼が多いのは、未成年と成人男性です。
子供の家出は昔からあることですが、今は暴力・薬物・売春などへの巻き込まれやすさが昔と全然違います。
「そのうち帰ってくるさ」と楽観しない方がよいと思います。
ひとたびヤクザ・半グレと関わったり、神待ちを経験すると、帰宅した後も家出・非行が再発を繰り返すことになります。
なお、神待ちとはネット掲示板などで、肉体行為と引き換えに宿と食事を提供してくれる男性(神)を探すことを意味するスラングです。
成人男性の捜索依頼が多いのは意外かもしれませんが、自殺率の高い危険なグループです。
仕事に行き詰まったり、リストラされて将来を悲観し、ぎりぎりまで元気を装った後、突如家出して死を選びます。
年齢的には30前後と50代が多いです。
「男だから大丈夫」というのは実は逆で、女性の家出人が自殺するケースは稀です。
家出人捜索の手順
家出人捜索の手順は基本的には単純です。
- 捜索先の優先順位をつける
- 人海戦術で聞き込み・張り込み調査する
しかし、実践には大きな困難が伴います。
それを順にみていきましょう。
手順1: 捜索先の優先順位をつける
土地それぞれで「家出人の典型的行動」というものがあります。
計画性のない家出の場合はこれに従うケースが多いです。
例えば埼玉や群馬の家出人なら、ほぼ100%県内にとどまらず、上野・秋葉原か池袋・新宿に向かいます。
しかし、同じ東京都隣接県でも神奈川県民なら横浜駅周辺の方が濃厚です。
同様に、広島市に家出してきた場合に家出人が見つかりやすい場所、広島から家出する人が行きやすい場所、というものもあります。
こういうことを経験の裏付けを持って知っていないと、捜索先がなかなか定まらないことになります。
家出人が自殺の意思を持っている場合、話はまた変わってきます。
近隣の山に向かう場合もありますが、死ぬ前に思い出の場所を旅行するケースもとても多いのです。
すると、子供時代を過ごした町、卒業した大学など、ルーツを洗う必要があり、捜索範囲も拡大してきます。
さらに上記2種とは全く違う行き先の場合もあります。
部屋に残されたものやパソコンの最新履歴から、北海道とか予想外の場所が浮上するかもしれません。
あるいは駆け落ちなど同伴者がいる場合は、同伴者の線からも調べないと行き先は判定できません。
このように多くの可能性がある中で、捜索に使える人と時間は限られていますから、大胆な絞り込みをしていかねばなりません。
これはとても難しいことなのです。
手順2: 人海戦術で聞き込み・張り込み調査する
捜索先の優先順位がつけられたとしても、次のプロセスにも大きな困難が待ち構えています。
自力で探す場合、家族以外に何人集めて何日協力してもらえるでしょうか?
特に捜索先が遠方の場合、交通費・宿泊費が人数分発生し、お礼も渡す必要が出て来るでしょう。
素人が次々と聞き込みをかけるといった行動を実行できるでしょうか?
特に地元ではなく、土地勘のない遠隔地の場合、素人集団が効率よく捜索などできるものでしょうか?
ネットカフェやホテルは客のプライバシー保護を優先し、聞き込みへの協力は基本的に拒否するので、それをクリアする技も必要です。
このように第二の手順も素人が自力でやるのはほぼ不可能なのです。
ここに興信所が利用される理由があります。
情報とコネクションの大切さ
家出人がある街に滞在しているらしいとわかったとします。
ネットカフェ、マンガ喫茶、ウィークリーマンション、ビジネスホテルなどが見つかりそうな場所だという予測くらいは誰でもできます。
問題は、ネットカフェならどこのネットカフェが可能性が高いか、ということです。
大きな街ならネットカフェもホテルも大変な数がありますから、手当たり次第に探し回っていたのでは途方もない時間がかかります。
探偵社も最初はそうやって駆けずり回って探します。
しかし、捜索経験を積むうちに、どこが見つかりやすく、どこはいそうにもない、ということがわかってきます。
ネットカフェひとつにしても、料金・システム・周辺の生活の便などの面で、家出人にとって居心地のいい店とそうでない店がわかってきます。
こうしてデータが蓄積されていき、発見のスピードがどんどん上がっていきます。
聞き込みを重ね、発見された時はお礼を言いに行くことを続けるうちに、コネクションもできてきます。
最初は宿泊施設などはどこも聞き込みに非協力的なものです。
お客さんのプライバシー優先だし、安易に信用して借金取り・ヤクザ・ストーカーなどの人探しに協力することになったら困るからです。
しかし、本当に家族のために捜索している探偵社なんだな、と納得すれば、少しくらい協力してもいいというところも出てきます。
こういうコネクション作りを積み重ねていくと、やはり捜索のスピードアップにつながります。
人探しの得意な探偵社は、自社のテリトリーで以上のような情報とコネクションの蓄積があるから、発見が早いのです。
素人や土地勘のない他所の探偵に真似できることではありません。
こういうことを全国の拠点で実践している探偵社の方がローカルな探偵社より人探しに強いのは言うまでもありません。